神戸市会本会議において、当会派の植中 美貴子議員が
「森林管理」「農業振興」「北神エリアの活性化」「不登校対策」の4項目について質問・提案を行いましたので、ご報告いたします。
1.持続可能な森林管理と「資源循環都市・KOBE」へ
まず、生活様式の変化や担い手不足により全国的に森林・里山の荒廃が進む中、
神戸の豊かな森をどう守り、循環させていくのか をテーマに取り上げました。
神戸市域の約4割・約2万ヘクタールが森林であり、その約7割が個人や企業の所有です。
植中議員は、
- 「森の未来都市神戸」の取組開始や推進本部の設置を評価したうえで、
- 企業・地域・大学・NPOなど多様な主体との連携強化
- 伐採した木材を無駄なく活用する資源循環
の重要性を訴えました。
市からは、
- 企業・NPO・大学などが参加する「こうべ森と木のプラットフォーム」の立ち上げ
- フォーラムや学校での授業を通じた啓発の実施
- 改定中の「六甲山森林整備戦略」を全市へ対象拡大し、資源循環を重視した戦略へ見直すこと
- 建築材・家具等としての利用に加え、炭・薪・木製品、チップ材としての活用など
が示されました。
再質問では、植中議員から、
- 木材処理に年間約3,000万円を要している現状にも触れつつ、
- 「しあわせの村」など市内施設での木質バイオマスボイラー導入による熱利用
- CO₂削減と光熱費削減、森林整備費の低減につながる可能性
について具体的な事例(他市のチップ化現場や市内ゴルフ場でのボイラー活用)を示し、導入検討を求めました。
市は、
- バイオマス発電での熱利用は既に一部で実施していること
- ボイラー導入には燃料チップの安定供給・初期投資・保管スペースなどの課題があること
を挙げつつ、兵庫県の補助制度も踏まえ、需要状況の把握など引き続き検討していくと答弁しました。
最後に植中議員は、次期環境マスタープラン素案で掲げられている
「資源循環都市・KOBE」 の理念に触れ、
部局縦割りではなく、副市長のリーダーシップのもとで、森林施策を一体的に進めるよう強く要望しました。
2.農業振興と新規就農・スマート農業・オーガニック
次に、農業の担い手確保と農業振興について質問しました。
全国的に新規就農者は減少傾向にあり、神戸でも高齢化と後継者不足が課題です。
一方で、本市では令和4年度から6年度の3年間で計130人の新規就農者が生まれ、
「神戸ネクストファーマー制度」による半農半Xの形での就農支援が一定の成果をあげています。
市からは、
- 経営開始資金や農業機械導入補助などの支援
- 「地域計画」により、農地一筆ごとの担い手を「見える化」し、新規就農者が借りられる農地を地図上で明確化していること
- ネクストファーマーの研修修了者160名が実際に就農していること
が報告されました。
しかし植中議員は、近隣自治体では研修時間が要件となっていない例もあることを示し、「神戸の新規就農のハードルが高い」と捉えられないよう、さらなる要件緩和を求めました。
市はこれに対し、
- 大規模な農地での本格就農においても、営農計画や経験に応じ柔軟に判断していくこと
- 農業委員会とも連携し、よりスムーズな就農につながる運用改善を図ること
- ネクストファーマーも希望があれば農地取得を可能とするなど、「就農しやすいまち神戸」をめざすこと
を答えました。
さらに植中議員は、
- ドローンによる農薬散布や水管理システム等のスマート農業技術の導入により、
作業時間が大幅に削減される国の実証結果を紹介し、 - スマート農機の導入だけでなく、新たな栽培方法への移行支援まで踏み込んだ普及を要望しました。
市は、
- ラジコン草刈機やアシストスーツなど既存作業の省力化支援
- ドローン直播栽培といった新たな栽培方法は心理的ハードルが高いことを踏まえ、
- 先進事例の紹介や市内でのモデル圃場整備など、効果が実感できる形で普及を進める考えを示しました。
また、都市と農村が近い神戸の特性を活かし、
- 観光農園や貸農園、牧場体験などを通じた食育・関係人口の拡大
- 今年度から実施する「神戸農村スタートアッププログラム」により、都市部の人材が農村をフィールドにビジネスを起こす取組
なども紹介されました。
植中議員からは、
あいな里山公園で開催された「オーガニックマルシェ」の様子にも触れつつ、
学校給食へのオーガニック導入の流れをさらに進め、「オーガニックシティ神戸」の実現へ一層の取組を要望しました。
3.北神エリアの活性化と神戸電鉄への支援
三点目は、北神エリアの活性化と鉄道ネットワークの維持についてです。
北神急行の市営化から5年が経過し、
運賃の大幅な低減により「三宮に出掛けやすくなった」といった声が多く寄せられています。
神戸市は、神戸電鉄との連携協定のもと、
- 駅再整備計画・設計への10分の10補助
- 改修工事費の4分の3補助
という手厚い支援を行い、花山駅・大池駅のリニューアル、有馬口駅の改修が進められています。
しかし植中議員は、協定にうたう「計画的な駅再整備」としては、まだ道半ばであると指摘し、
粟生線を含む神戸電鉄全体の経営方針に対して、従来以上に踏み込んだ働きかけを行うべきと質問しました。
市は、
- 駅前広場でのイベント開催などにより、既に一定の賑わいが生まれていること
- 有馬口駅をはじめ、他の駅でも地域・事業者と共に再生に向けた検討を進めていること
- 少子高齢化や沿線人口減により、今後粟生線の赤字問題が一層深刻化する懸念があること
を示したうえで、
「鉄道とまちが一体となったまちづくり」を進めるため、
神戸電鉄の経営にこれまで以上に関心を持ち、経営方針に対する積極的な働きかけのあり方を、スピード感を持って検討すると答弁しました。
植中議員からは、
北神急行線支援や駅再生支援のこれまでの取組を評価しつつ、
魅力ある北神エリアの実現に向け、
さらなる活性化と交通アクセスの維持・改善に、今後も積極的に取り組むよう重ねて要望しました。
4.不登校対策と「未然防止」への視点
最後に、増加傾向にある不登校児童生徒への支援と未然防止について取り上げました。
神戸市では、令和5年度の不登校児童生徒数が小中合わせて4,346人となり、
全国同様、深刻な課題となっています。
市は、
- 令和5年7月に不登校支援の基本方針を策定
- 全小中学校への「校内サポートルーム」設置
- オンラインなども活用した「ミライポート」の開設
など、支援体制の充実を進めていることを説明しました。
これに対し植中議員は、
「不登校になってからどう支えるか」だけでなく、「不登校を未然に防ぐこと」にも力を入れるべきと指摘。
東京都中野区の就学準備教室「リリーフ」の事例を紹介し、
就学前から学校生活へのイメージを持ち、コミュニケーション力を高める機会の必要性を訴えました。
具体的には、
市内全区に設置されている**「子供っと広場」**を活用し、
- 就学前の子どもたちが、小学校での学習体験や心構えを学べる講座の実施
を提案しました。
市からは、
- 小学校でのオープンスクール開催や、幼稚園・保育園との連携強化
- 子供っと広場への子育てチーフアドバイザー配置、相談支援機能の強化
- 未就学児と小学生が一緒に過ごせるイベントの実施
など既存の取組が示され、
今後は、
- 子供っと広場の閉館後や土曜日に、5歳児親子向けの交流プログラムを検討すること
- 子育てサークルなどへの実施場所提供、教育委員会の就学前相談の情報発信の強化
などを通じて、入学前の親子に寄り添った取組を進めると答弁がありました。
おわりに
今回の一般質問を通じて、
- 森林資源の循環利用と「資源循環都市・KOBE」への歩み
- 農業の担い手確保とスマート農業、オーガニックの推進
- 北神エリアのさらなる活性化と鉄道ネットワークの維持
- 不登校支援の充実と就学前からの未然防止
といった、神戸の将来に直結する課題について、具体的な提案と議論を行いました。
当会派としては、現場の声を大切にしながら、
市民の皆さまとともに、
**「環境と経済が循環し、誰もが安心して暮らせる神戸」**の実現に向けて、今後も引き続き取り組んでまいります。


