令和8年7月1日、神戸市会・都市交通委員会が開催されました。本委員会では、大野洋平委員長のもとで円滑に議事進行が行われ、会派より平井真千子委員、なんのゆうこ委員が出席いたしました。

今回の委員会では、交通局、都市局、建築住宅局の3局より令和8年度の事業概要、ならびに重要案件についての報告が行われました。また、市バスの減便や路線再編に反対・見直しを求める3件の陳情(第211号、第212号、第213号)の審査が行われ、本会議に向けて会派としての態度決定を示しました。
以下に、当局からの報告事項の解説、および審議された陳情の概要と会派の対応について詳細にご報告いたします。
1. 交通局:令和8年度事業概要の解説
交通局からは、少子高齢化、昨今の燃料費高騰や深刻な運転手不足といった極めて厳しい経営環境を踏まえた、令和8年度の予算概要および主要事業が示されました。
- 予算・組織の概要:
- 局長:城南 雅一 / 職員数:963人(令和8年4月1日現在)
- 自動車事業会計予算(市バス):収益的収入約119億1,323万円、収益的支出約115億3,584万円(当年度純損益:税抜で約2億4,221万円の黒字見込み)。
- 高速鉄道事業会計予算(市営地下鉄):収益的収入約274億2,353万円、収益的支出約304億8,989万円(当年度純損益:税抜で約32億854万円の赤字見込み)。
- 安全・快適な運行を支える設備投資:
- ホームドア設置(海岸線):西神・山手線、北神線への設置に続き、令和9年度末までに海岸線全10駅への設置完了を目指します。令和8年度は、和田岬駅、御崎公園駅、ハーバーランド駅より順次整備を進めます。
- 車内防犯カメラ設置:西神・山手線、北神線のセキュリティ向上のため、令和8年度中に全車両(174両)への整備を完了させます(令和8年4月末現在の進捗率:65%)。
- 橋脚耐震化補強工事:南海トラフ巨大地震等に備え、耐震基準を満たしていない橋脚の耐震補強工事を継続します。
- エレベーターの更新(上沢駅):バリアフリー基準に適合させるため、ホームとコンコースを結ぶ1号機、地上とを結ぶ2号機の大規模更新を行います(令和8年度工事着手、令和9年度供用開始)。
- 地下鉄1日乗車券のQR化:磁気カードの材料供給停止に伴い、令和8年4月1日より「QR1日乗車券(980円)」へ完全移行しました。なお、「市バス・地下鉄共通の磁気1日乗車券」はQR対応が困難であることから、令和8年3月末をもって販売を終了しています。
- 利便性の向上と現場業務体制の効率化:
- 新バスロケーションシステムの運用:他社との共同運行路線を含む走行位置・到着時間が確認できるシステムを令和8年4月1日より開始し、混雑状況を表示する機能も令和8年度中に追加予定です。
- 駅・ターミナルの拠点機能強化:山陽電鉄との乗換駅である板宿駅の大規模改修(令和9年秋頃リニューアル完成予定)や、西神中央駅、名谷駅のバスターミナル上屋改修を進めます。
- バス停留所上屋の整備:子育て世帯や高齢者の移動負担軽減のため、令和8〜10年度の3年間で計30か所に上屋を整備します(令和8年度は病院や公共施設付近の10か所を優先整備)。
- 割引制度の見直し:
- 「市バス・地下鉄連絡定期券割引(10%)」について、制度開始から40年が経過し導入趣旨が希薄化したことから、令和8年10月1日より廃止します(連絡定期券自体は継続発行)。
- 「市バス昼間割引定期券」は発売実績が僅少であるため、令和8年9月末をもって販売を終了します。
- 附帯事業の強化:資金不足の改善を図るため、令和8年度末廃止予定の「市バス垂水支所」用地(約6,800㎡)の売却、および「市バス舞子高校前回転地」用地(約2,200㎡)の利活用手続きを進めます。
- 現場の省人化・最適化:インターホンやカメラを用いて駅窓口業務を支援する「駅務遠隔システム」の整備や、AIを活用した「営業ダイヤ・乗務ダイヤ」の最適化システムの導入(令和8年9月下旬予定)、市バス営業所における遠隔点呼の導入(令和8年度試験運用)などを進めます。
- 交通ネットワークの最適化:
- 市バスの運行効率向上と管理コストの削減に向け、エリア単位で管理運営委託を行う「エリアマネジメント」を導入し、営業所体制の再編を行います(令和9年度新体制開始)。
- 客観的なデータ(2タッチデータ等)に基づき、需要と供給のバランスを考慮した須磨エリア(令和8年8月予定)、しあわせの村・ひよどり台エリア(令和9年4月予定)における路線見直しを進めます。
2. 都市局:令和8年度主要事業の解説 & 神戸ハーバーランド株式会社のあり方について
都市局からは、都心・三宮の再整備、既成市街地・ニュータウンの活性化、安全・安心な都市基盤整備、および外郭団体である「神戸ハーバーランド株式会社」のあり方に関する方針が報告されました。
- 予算・組織の概要:
- 局長:松崎 吉希 / 職員数:296人(令和8年4月20日現在)
- 一般会計予算(都市局関係分):歳入合計約279億887万円、歳出合計約239億8,940万円。
- 市街地再開発事業費等予算:歳入・歳出合計約36億1,793万円。
- 産業団地整備事業会計予算:収益的収入1,400万円・支出5,300万円、資本的収入約6億100万円・支出約84億3,500万円。
- 都心の再生(三宮再整備):
- 新たなバスターミナルの整備:雲井通5・6丁目地区において、分散するバス乗降場を集約する新たなバスターミナルの整備を進めます(Ⅰ期地区のエリア名称は「神戸三宮ツインゲート」に決定)。令和8年度はⅠ期地区の新築工事への補助や「バスタ神戸三宮」の運用開始に向けた準備を進めるとともに、Ⅱ期地区の事業計画策定に向けた検討を行います。
- 「えき≈まち空間」等の事業推進:JR三ノ宮新駅ビル南側広場空間の設計、センター街東口周辺や三宮東交差点周辺の整備(歩道空間の高質化)を進めるほか、歩行者の乗り換え動線を強化する「三宮デッキ」の整備工事を行います。
- 回遊性向上と本庁舎2号館再整備:税関線等の再整備(設計・工事)と、ポートループ(連節バス)の利便性向上、新たな公共交通システム(BRT・LRT)の導入検討を行います。また、民間活力を導入した「本庁舎2号館」の新施設整備工事や調整を進めます(令和11年9月完成予定)。
- 既成市街地とニュータウンの再生:
- 駅周辺のリノベーション:西神中央(バスロータリー整備、プレンティ広場の緑化)、名谷(落合中央公園やバス停上屋のリニューアル)、垂水(垂水駅前東広場の整備)等の駅周辺整備を推進します。
- 神戸電鉄沿線の活性化:有馬線・三田線・粟生線の魅力を高めるため、唐櫃台駅の駅舎再整備(設計、検討)、有馬口駅・鈴蘭台西口駅の改修等を実施します。
- 既成市街地のにぎわいづくり:鈴蘭台駅北地区の土地区画整理、新長田の駅前広場再整備設計、および地下鉄海岸線沿線におけるプロモーション(シタマチコウベ)や「中学生以下フリーパス」事業、兵庫運河環境学習施設の整備(令和8年度供用開始)を進めます。
- ポートアイランド・六甲アイランドの活性化:リボーンプロジェクトの推進、島内住民や企業と協働したにぎわい交流社会実験、プロジェクションマッピングを活用したにぎわい創出(六甲アイランド)などを推進します。
- ニュータウンの活性化:西神中央「かりばプラザ」への高齢者住宅(令和8年度工事着手、令和10年入居開始予定)や商業機能の導入、高倉台近隣センターの活性化検討(計画策定)などを進めます。
- 都市のスポンジ化対策と多様なまちづくり:
- 空き家等が発生する既成市街地やニュータウンに対し、地域特性に応じた取組みを進めるため、基本的な考え方を示す「スポンジ化対策要綱」を令和8年度中に公表します。
- 市有地における良質な宅地供給の推進、夜間景観形成(旧居留地など)の整備・支援、歴史的建造物(北区有馬町の和風建築など)の保全・活用、多井畑西地区における里地里山の再生に取り組みます。
- 交通ネットワークの構築と安全・安心の都市基盤:
- ポートライナーの増便に向けた車両増備設計および三宮駅ホーム拡張工事、地域コミュニティ交通(北区淡河町・垂水区塩屋・須磨区西須磨・西区櫨谷町などの本格運行、その他地区の導入・運行支援)、自動運転の実証実験(灘五郷エリア等)を進めます。
- 密集市街地の解消を図るため、下三条町北地区防災街区整備事業(令和8年度に建物除却・文化財調査を完了し、建築工事着手)や、生活関連道路「東山菊水線」の整備(湊川町9丁目〜菊水町10丁目、令和10年度末事業完了予定)を引き続き進めます。
- 神戸経済を支えるため、環境に配慮したスマート産業団地の造成工事(分譲公募は令和9年度以降開始予定)を進め、ポートアイランド(第2期)への積極的な企業誘致に取り組みます。
- 【報告事項】神戸ハーバーランド株式会社のあり方について:
- 現状と背景:神戸ハーバーランド株式会社は、昭和63年4月に市と多数の民間事業者の出資により設立され、地区管理や集客を担ってきました。まちびらきから30年以上が経過し、民間による自立的な運営やにぎわいづくりが行われている現状を踏まえ、外郭団体改革方針において「重点的見直し団体」に指定され、あり方の検討が進められてきました。
- 今後の方針:神戸市が株式を保有し続ける必要性は相対的に低下していることから、市の保有する全株式について民間事業者への譲渡(売却)を検討します。売却に当たっては、これまでの設立趣旨や目的を理解し、まちづくりに協力できる譲渡先を選定します。なお、株式譲渡後も市はハーバーランド地区のまちづくりやエリアマネジメントに「ハーバーランド運営等基金」を活用しつつ、必要な支援・関与を継続します。
- スケジュール:令和8年度中に譲渡先の選定、譲渡条件の整理および協議を行い、令和9年度以降に株式譲渡の実施を予定しています。
3. 建築住宅局:令和8年度主要事業の解説
建築住宅局からは、豊かな住まいづくりの推進、居住の安定確保、市営住宅の適正なマネジメント、および空き家・空き地対策の推進について報告されました。
- 予算・組織の概要:
- 局長:増田 匡 / 職員数:284人(令和8年4月20日現在)
- 一般会計予算(建築住宅局関係分):歳入合計約23億9,129万円、歳出合計約49億1,750万円。
- 市営住宅事業費予算:歳入・歳出合計約340億5,766万円。
- 主要事業の展開:
- 豊かな住まいづくりの推進:若年夫婦・子育て世帯の住み替え補助(こうべぐらし応援補助金)や、市営住宅空き住戸の若年夫婦・子育て世帯向け民間賃貸活用を進めます。また、分譲マンションの適正管理(条例に基づく管理状況届出・情報開示制度、管理計画認定制度の推進)や、住まいの安心支援センター「すまいるネット」の運営を行います。
- 居住の安定の確保:居住支援協議会の運営や居住支援法人との情報共有を進め、セーフティネット住宅の登録・居住サポート住宅の認定、ひとり親世帯への家賃補助等を促進します。
- 市営住宅のマネジメント推進と適正管理:「市営住宅マネジメント計画」に基づき、良好な市営住宅ストックの形成、管理戸数の円滑な縮減、および再編(廃止・建替え)やエレベーター設置等の改修を進めます。また、入居者の募集・選考、ならびに高齢化や世帯数減少に対応するため、「家賃と共益費の一括徴収制度」の導入促進による自治会負担の軽減に努めます。
- 空き家・空き地対策の推進:ダイレクトメール発送等を通じた所有者への意識啓発、空き家等活用相談窓口の運営、空き家おこし協力隊による活用支援を行います。また、周辺に悪影響を及ぼす老朽空き家に対する所有者への指導強化、解体費用補助の拡充、および所有者不明空き家に対する弁護士を含めた特命チームの活用を推進します。
- 耐震化の推進と市有建築物の維持保全:住宅・建築物の耐震化補助・普及啓発、危険ブロック塀等の撤去補助を継続します。また、市有建築物を適切に整備・改修し、ZEB化(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などカーボンニュートラルを推進するとともに、老朽化による事故リスク最小化のための施設保全パトロールを行います。
4. 提出された陳情の概要と自由民主党としての態度決定
本委員会に提出された3件の陳情に対する概要と、自由民主党無所属の会としての態度決定(会派としての審査態度)は以下の通りです。
■陳情第211号:市バスの減便・廃線案に反対する陳情
- 陳情要旨:
- 減便・廃止案を提示する前に、収入・支出等にかかる徹底的な検討と、住民が理解納得できる説明を行うこと。
- 交通局からの提案を押し付けるのではなく、地域住民・バス利用者が納得するまで議論を尽くすこと。
- 自由民主党無所属の会としての決定:**【審査打ち切り】**を主張。
- 理由:住民の不安は理解するが、30年間で利用者が半減した市バス事業の経営改善と、深刻な運転手不足を踏まえた持続可能な路線網への転換は避けられない状況にある。現在提示されているのは「素案(たたき台)」の段階であり、交通局は福祉施設や地域団体等と早期に複数回の丁寧な意見交換を重ねている。今後も理解が得られるよう説明を尽くすという当局の姿勢を了とし、審査打ち切りとしました(賛成多数により審査打ち切りが決定されました)。
■陳情第212号:市バス路線の継続と充実を求める陳情
- 陳情要旨:
- 2027年4月実施予定の65系統、66系統、120系統の廃止・減便を中止し、存続させること。
- 65系統は、しあわせの村まで延伸すること。
- 自由民主党無所属の会としての決定:**【不採択】**を主張。
- 理由:現在、地域団体や福祉施設等の関係者に対して素案をお示しし、実際のバスのご利用状況等について幅広く意見交換を重ね、見直し案の精査を行っている最中である。本年秋頃には検討内容を反映した見直し案が示される予定であり、現段階で一定の結論(存続・延伸)を前提とする本陳情については、不採択と判断しました(賛成少数により、不採択と決定されました)。
■陳情第213号:市バスの路線廃止・減便を中止することを求める陳情
- 陳情要旨:
- 令和8年8月実施予定の須磨エリアにおける路線の廃止・減便を中止すること(東白川・若草路線の本数維持、北須磨団地と須磨駅を結ぶ路線の存続、74系統の日中運行、通学路線の維持、板宿・新長田間等の大幅減便中止など、全8項目)。
- その他(高校生路線のダイヤ増便、減便された70系統等の元回復、120系統の存続、運転手の処遇改善、経営改善支援補助金の満額補助、燃油高騰分の補填、客観データ(2タッチデータ等)に依存しない見直しなど、全7項目)。
- 自由民主党無所属の会としての決定:**【不採択】**を主張。
- 理由:燃料費高騰や深刻な運転手不足など、市バス事業は極めて厳しい経営状況下にある。市民の貴重な移動手段を将来にわたって維持・存続させるためには、客観的な利用実態(2タッチデータ等)を分析し、需要と供給のバランスに則った路線見直しは必要不可欠である。陳情の求める「路線の現状維持や無条件の存続」は、持続可能な市バス事業という大きな方向性と異なるため、不採択と判断しました(賛成少数により、不採択と決定されました)。
自由民主党神戸市会議員団・無所属の会は、物価高騰や担い手不足に直面する公共交通事業の持続可能性をしっかりと確保しつつ、高齢者や子育て世帯など市民の皆様にとっての利便性が適切に配慮されるよう、今後も責任ある議論と丁寧な政策提言に努めてまいります。

